誕生日会で奴は花をプレゼントしてた。臆面もなく。「いっかいやってみたかった」ってむしろ得意げに。女はうっとりしてた。私にはわかる。あの潤んだ瞳は「女子」ではなく「女」のソレである。数ヶ月前は私もあーゆー目をしてたから分かる。女がトイレへと席を立つと同時に、奴も席を立つ。トイレで彼らが何をしようとしているのか、考えたくも無いが想像に易い。男には彼女がいるとか、女は私の友人であるとか、過去に私が「あの子だけはやめて」って念を押したのにも関わらず私の前で堂々と彼らは男と女であり続けていることとか。ドロドロとした真っ黒な感情に支配されそうになり、私はあわてて宇宙に思いをはせる。気の遠くなるような、意識が朦朧とするような、広い広い宇宙のこと。目の前で繰り広げられるこの光景から逃避するためなら、私は何でもする。もしもその場に毒があったなら、私はそれを誰に盛っただろう。男か、女か、それとも自分か。

「好き」と言ってくれる人がいて、私はその人のことを「好きと言ってくれるから好き」なんだとしたら、その感情はまやかしなんだろうか。その程度の感情で「私も好き」と回答することは不誠実な行為なんだろうか。難しく考えすぎている気もするし、自分が恐ろしく軽い女のようにも思える。

わたしがミニシアター系邦画の主人公なら、沖縄の離島とかそういうところへ旅に出て、地元の人たちと心の交流なんかしちゃって「生きるってすばらしい」とか「人は何度でもやり直せる」とかそういうことを静かに穏やかに悟ったりするんだろうけど、私にはそれだけのことをする勇気も金もないのであった。中途半端に捨てられないものが多すぎる。

あー私ってかわいくねーなー。