ちごのそらね

恋する同期のラブトークに、耳を塞ぎたくなる朝だってあるわけだ。まっすぐに恋心をうたうaikoの歌声が、胃にもたれる夜だってあるわけだ。そのすべてがホルモンのせいだとは言わないけれど、とにかく生理が重すぎる。

食欲は無いのにおなかはきっちりすくので、頭がぐるぐるする。しかし食べ物のにおいを嗅いだだけで、吐き気に襲われる。こんなときに限って「とんかつ弁当」しか残っていなかったりする。眩暈。電話のベルが意識の向こう側から聞こえる。仕事仕事。仕事なので取る。先方の名前が聞き取れない。空中に分散している意識をかき集めて、なんとか担当につなぐ。上司がうざい冗談を言う。精神統一で必死の愛想笑い。なんでだろう、言っている言葉の意味は分からないのに、それが「冗談」であることは分かる。ため息が止まらない。「ため息ばっかついてると、幸せが逃げるで」に、更なるため息。鎮痛剤を飲む時間だけは、忘れない。電話の向こう側で、怒鳴っている客がいる。全てが、私を包む柔らかい膜の向こう側での出来事なんだと思うようにする。

目をつぶると、世界が回転する。今はじっと息を殺して、嵐が過ぎ去るのを待つ。

同期の男の子が、おしゃれぶったスーツを着ていた。ああ、秋なんだなあ、とぼんやり思った。