落日

確かなのは只唯一 君のさっき迄の温もり

おつかれさまでした、ってメールが来ただけで、しばらくは携帯を握りしめてにやにやしてしまう。いまどき中学生でもそんな気持ち悪いことしないでしょう。ついでにこの気持ちの悪い感情を、恋だとかいう気持ちの悪い名称でまとめてしまえば、すこしは楽になれますか。たぶん私は過去や未来から逃げたいだけ。その場しのぎで今をやり過ごしたいだけ。過去が今を作ってること、今が未来を作ってくこと、そういう当たり前のことを無視したいだけ。楽な方向を選んで流れていってるはずなのに、なんでこんなに苦しいんでしょう。

二度目の訪問となる後輩の部屋は、前に来たときより散らかっていた。洗面所にならぶ2本の歯ブラシにぐさりときた。こないだ来たときは1本しかなかったので、前は隠しておいてくれたんだろうな、一応そのへんの配慮はあるんだな、と妙に感心した。いっそのこと3本目の歯ブラシを突き刺してやろうか。いや、きっと愚かな私は、女の存在を感じさせるアイテム、ハート柄のマグカップや枕元のぬいぐるみや、そういったものに対する感覚もすぐに麻痺してしまうんだろう。ふたりでコンビニで買ったカップラーメンと、それから私はプリンを食べた。罪悪感という名の、甘くて苦い快楽。

ひとりになるのは怖い。たぶんそれだけ。奇跡を信じない私に、奇跡は起こらない。