生活のためはたらいて

ぼくはまちをたいらげる


ひさしぶりに好きだった人と飲むことになった。白木屋でやっすいチューハイを飲みながら、女の話を聞くはめになった。「おれさ、今日25個くらい嘘ついちゃったよ、目がきれいだねとか松たか子に似てるねとか。おれ、なにがしたいんだろ」。セックスだろ、と話を聞いていた男たちは笑った。心がつぶれそうになるのを必死でこらえた。頭をからっぽにして「さいていー」と笑う。帰り際、俺っていつまでこんなことしてるんだろなあ、とつぶやく背中に、あんたはずっと変わらんよ、と告げた。本人に聞こえたかどうかはしらん。こんなに最低な男のことを、あんなにも好きだった時間がある。そのことが、今も私を苦しめる。

後輩の彼女と電話で話をした。落ち着いた低いトーンで「いつも○○がお世話になってます」と、完全に口調は嫁のそれであった。「あ、いえ、こちらこそ」、しどろもどろで答えた。「○○さんはいい先輩だって、いつも彼から聞いてるんですよ」。体に爆弾をまきつけて、自爆したい気分だった。なにこれ、なんの罰ゲーム?なんだって私は、微妙な関係の後輩の前で、その彼女と会話しなきゃならんのだ。

「彼氏の会社の人たちとしゃべることになって、彼女からしたらいい迷惑だよね」と言ったら、後輩は「頭いい子だし、空気よめる子なんで」と笑顔で答えた。自分にも、恋人にも、それから、自分の人生にも自信を持ってる人の顔。「そっか、いい彼女だね」。そんないい子なら、もっと大事にしなきゃだめだよ。言葉を飲み込んだ。

涙がでるうちは大丈夫っていうけど、
やっぱり悲しい。かなしいよ。